公開データベースを利用して、がんにおける遺伝子の発現と予後の関係を調べるには、どのようにしたら良いでしょうか。
TCGAの公開データをダウンロードして、Rや統計ソフトを使ってデータの処理と解析を行えば調べることができますが、専門的な知識と技術が必要です。
本記事では、バイオインフォティクスの技術がなくても、簡単にがんにおける遺伝子の発現と予後の関係を調べることができるウェブツール「Kaplan-Meier Plotter」をご紹介します。
Kaplan-Meier Plotterとは
**Kaplan-Meier Plotter(https://kmplot.com)**は、乳がんや肺がん、胃がん、卵巣がんなど複数のがん種に対して、遺伝子発現レベルと生存期間の関連を解析できるウェブベースのツールです。
主に以下のような機能があります:
- 複数のコホート(TCGA、METABRIC、GEOなど)からの生存データを利用
- ユーザーが入力した遺伝子名に基づく生存曲線(Kaplan-Meier曲線)を自動生成
- 自動で統計解析(Log-rank検定、ハザード比、95%信頼区間など)を実施
- サブタイプ別の解析も可能(例:ER陽性乳がんのみ、Stage IIのみなど)
Kaplan-Meier Plotterの使い方
ここでは、乳がんにおける遺伝子「TP53」の発現と全生存(OS)の関連を調べる例を紹介します。
1. サイトにアクセス
以下のURLからKaplan-Meier Plotterのトップページへアクセスします:
トップページから「Breast Cancer」をクリックすると乳がんの解析ページに移動します。
2. 遺伝子名を入力
画面上部の検索窓に調べたい**遺伝子名(例:TP53)**を入力し、「Submit」をクリックします。
3. 条件の設定
表示される設定画面では以下のような項目を選択できます:
- 生存指標(Overall survival, Relapse-free survivalなど)
- コホートの種類(例:TCGA, METABRIC)
- サブグループ解析(例:ER陽性、HER2陰性など)
- Cutoffの設定方法(自動 or ユーザー定義)
基本的にはデフォルトのままで問題ありませんが、臨床的に関心のあるサブグループがあれば設定しましょう。
4. 「Draw Kaplan-Meier Plot」をクリック
条件を設定したら、「Draw Kaplan-Meier Plot」をクリックします。数秒後にKaplan-Meier曲線が表示されます。
5. 結果の読み取りと保存
- 上部にはハザード比(HR)とp値が表示されます。
- グラフは右クリックで画像として保存可能です。
- 下部には症例数や追跡期間も示されており、論文やプレゼン資料にも使いやすいデザインです。
さいごに
Kaplan-Meier Plotterは、レジデントや研究初心者にとって非常に使いやすい生存解析ツールです。面倒なデータ処理や解析ソフトのインストールなしで、遺伝子と予後の関係を簡単に可視化できます。
興味のある遺伝子を試してみるだけでも勉強になりますし、臨床での疑問が研究の種になるかもしれません。ぜひ、日々の診療や勉強に活用してみてください。
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